いろは物語

第二話(2/5)

平成7年(1995)1月17日 AM5:46
 
阪神大震災

忘れもしないあの日、まだ眠っていました。
 
夢心地の無意識の向こうから「ゴー」という地を這うような低い音が迫ってきます。
 
「なんの音かな?」 と思った瞬間、「ドカーン」と身体が上に飛びました。
 
「何事やぁ??」
 
訳がわからないまま、すぐに横に眠っている息子の上におおい被さりました。
 
揺れはますます大きくなり、上からものがドンドン落ちてきます。
 
「うわぁ~ごっつい地震やぁ~」
 
揺れはなかなか収まらず左右に身体が振り回されます。
 
「早く収まってくれぇぇ~」本当に祈る気持ちでした。 自分のまわりはグチャグチャ、足の踏み場もありません。
 
永遠に続くんかい!と長く感じた揺れも、しばらくしてようやく収まりました。
すぐに別部屋で寝ていた嫁さんに「大丈夫か!」と声をかけると、
 
「大丈夫!」の声が・・・初めてホッとした瞬間でした。

 

実は前日の夜、たまたま嫁さんが自分の三面鏡の位置を変えていたのですが、これが不幸中の幸いでした。
 
寝ていた嫁さんと娘めがけて倒れてきた重く大きなドレッサーを、その三面鏡が支えてくれたのです。
 
奇跡的にドレッサーの下敷きになるのを防いでくれました。
 
揺れは収まったものの、まるで状況がつかめません。
 
「今日は店に行くのは遅れるなぁ」とボンヤリ考えながら外を見て本当にたまげました。
 
なんと家の前にあるビルがひっくり返ってました。
実家の母、親戚、従業員の皆、大丈夫やろか?不安になり、居ても立ってもいられずあわてて家族で外へ飛び出しました。
 
実家までは歩いて行ける距離なのですが、着くまで永遠のような長い時間に感じました。
 
ようやく着いてみると、やはり実家は半壊していました。

震災時の実家 (左側の家、右にづれてる!)
なんとか母の無事を確かめホッとしたのもつかの間、
「店はどうなってんねん??」
家族を残し、あわてて今度は1人で店に向かいます。
店に行くまでに見た町の風景、そこで見たものは、非現実的な、悪夢のような情景。
動きを止めた町は、かえって不気味に静かで、それでいて目の前に広がるのは、 地獄絵図で見たような光景。

本店のいろは精肉店・・・・・・

とんかついろはもアカン・・・・

めちゃくちゃや・・・・・・

あぁここもあかん・・・・・・

無残にも全壊でした・・・・所有する4店舗のうち、
市場にあった3店舗が全壊・・・
ほんまに文字どおりペッチャンコ・・・

「あかん終わった・・・・・・」
 
その日、そのあと何を考え、何を話したか、全部意識がありません。
 
それから時間は風のように過ぎていきます。